GDP改定値 肝心なのは成長の持続力だ(911日付・読売社説)

 高めの成長率は心強いが、景気回復の持続力には不安もある。デフレ脱却は道半ば(みちなかば)だ。

 今年4~6月期の実質国内総生産(GDP)改定値()は、年率換算の成長率が3・8%となり、速報値()の2・6%から上方(うえざま)修正された。

 速報段階でマイナスだった設備投資が6四半期ぶりのプラスに転換したほか、公共投資も増加幅が拡大したためである。

 成長率は1~3月期の4・1%に続き、4%前後の高水準を維持した。日銀の「量的・質的金融緩和」や政府の緊急経済対策など、安倍政権の経済政策「アベノミクス」が奏功(そうこう)したのだろう。

 4~6月期のGDPは、消費税率を来春に5%から8%に引き上げるかどうか、安倍首相が判断する大きな材料となる。

 甘利経済財政相は消費増税に向けて「好材料が一つ追加された」と述べたが、油断(ゆだん)は禁物(きんぶつ)だ。

 設備投資は増加したとはいえ、小幅(こはば)にとどまっている。足元の高成長は経済対策などで底上げされており、政策効果が出尽くせば急ブレーキがかかりかねない。

 重要なのは民間主導の力強い成長を実現することだ。

 首相は10月1日にも消費増税の判断を示す(しめす)という。日本経済が増税に耐える体力を回復したかどうかは、まだ不透明だ。デフレ脱却を最優先し、来春の消費増税は見送るべきである。

 1997年に消費税率を3%から5%に上げた際は、景気失速で法人税などの税収が大きく落ち込んだ。財政再建は大切だが、増税が逆効果となるリスクにも警戒(けいかい)しなければならない。

 国際情勢(しょうせい)への目配りも不可欠(ふかけつ)である。新興国(しんこうこく)の成長に陰り(かげり)が出てきた。シリア情勢の緊迫化(きんぱくか)で原油相場(そうば)は上昇している。

 日本では原子力発電所(発電所)の再稼働(かどう)が遅れ、電力の約9割を火力(かりょく)発電に頼っている。輸入燃料が高騰(こうとう)すれば、電気料金が一段と上がることが懸念(けねん)される。

 原材料の輸入価格高で、食品などにも値上げの動きが広がっている。堅調(けんちょう)だった個人消費はここにきて息切れ気味(きみ)といえる。

 コスト高が主因の「悪い物価上昇」に消費増税が重なれば、家計への打撃は大きい。物価上昇にあわせて家計の収入も増える「好循環」(こうじゅんかん)を生み出すことが大事だ。

 労働者の平均賃金(ちんぎん)は上昇に転じたものの、ボーナスや残業代の増加が中心で、基本給は14か月連続で減少している。本格的な賃金改善を急がねばならない。

(2013年9月11日01時34分  読売新聞)

 

1. デフレーション【deflation

一般的物価水準が継続的に下落しつづける現象。通貨の収縮、金融の梗塞(こうそく)、生産の縮小、失業の増加などが生じる。デフレ。インフレーション。

2.かんじん【肝心/肝腎】

[名・形動]最も重要なこと。「な話」「慎重に対処することがだ」

3.だっきゃく【脱却】

[名](スル)古い考え方や欠点などを捨て去ること。また、よくない状態から抜け出すこと。「旧弊をする」「危機をする」

4.、、、、かねない =かもしれない

 

5.くばり【目配り】[名](スル)いろいろな所に注意を行き届かせること。「周りにも怠り(おこたり)なくする」

 

6.かげり【陰り/×翳り】

太陽や月の光が雲などによって少し暗くなること。また、その部分。

表情などの、どことなく影がさし、暗くなったような感じ。「表情にが見られる」

よくない兆候。「景気にが出る」

.てん・じる【転じる】

[動ザ上一]「てん(転)ずる」(サ変)の上一段化。「攻勢に・じる」

 

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